芥川龍之介の「杜子春」は、インド映画の超大作スペクタクルだと思って取り組む【文学ライブ 語り劇】
文学ライブ 語り劇!小河知夏劇場 脚本・演出担当の富田剛史です。小河知夏劇場で「語り劇」にする作品の脚色や演出について、(ややネタバレもありますが…)制作者の見方や思いを「制作ノート」として綴っていこうと思います。
今後、朗読でも演劇でも映像でも…何かでこの作品に取り組もうとする未来の人にも、参考になったら嬉しく思います。
さて今回は、芥川龍之介の「杜子春」。
「杜子春」は、芥川龍之介中期の作品で、結婚し長男が生まれるという幸せな時期だったからでしょう、明るいハッピーエンドでスカッと終わる気持ちのいい作品です。
その痛快さは、例えばRRRのようなインド映画の娯楽超大作ような感じ。笑
え?インド映画は観たことない…。だったら、ディズニー映画やハリポタ的なハリウッドファンタジーでもいいです。要は、実によくできた「ウェルメイドなジェットコースター映画」という意味です。
とにかくストーリーがジェットコースター。
前半はダメ人間の主人公がいい気になって調子にのっていき、読者がオイ!コラ!とツッコミまくれるところ満載。
後半はそんな主人公に大変な試練が訪れ、読者はドキドキハラハラ。
そして、涙なくしては見られないクライマックスでぐ〜いぐい盛り上げたところで、芥川龍之介はスパッと切り替えて、鮮やかなエンディングへと一気に持っていってくれます。
ほら、どうですか。エンディングロールでみんなで踊れば、まるで超大作インド映画みたいじゃないですか!?(観たことない人、スミマセン…笑)
語りの勝負は、場面を鮮やかに変えていく「テンポ感」
しかも場面がみんなダイナミックです。贅を尽くす大金持ち時代、棒に跨がり峨眉山(がびさん)へひとっ飛びの空中シーン、峨眉山での修行時代のスペクタクル、そしてあの地獄のシーン…。
これをもし実写でやるなら特殊メイクとCGを駆使して、もの凄い予算になるでしょう。その辺も、インド映画かディズニーか…って感じですが、そんな一大スペクタクル超大作の原作となっても十分面白そうなのがこの「杜子春」という作品なんです。
…という訳で、そういう超大作の映像を想像しながら、極小予算でも負けないように脚色・演出したのがこの小河知夏劇場版「杜子春」です。
もちろん、特殊メイクもCGも使えませんが、大丈夫。我々には最強の秘密兵器があります。
それは、お客様の想像力。
映像ならシーンが変わったのは誰でも分かります。しかし語り劇では、照明も舞台セットも衣装すら変わりません。そこでシーンを切り替えられるのは、小河知夏の「認識」だけ。
まずはこの「超大作スペクタクル」の映像を、小河知夏自身の脳内にしっかりとイメージすること。緩急をつけ、各シーンの色を鮮やかに塗り分け、交響曲のようにテンポ感をだしていきます。
そうしてイメージできた小河知夏の目に映る映像は、なぜか観ている人の心のスクリーンに直接投影されるようになります。そこが面白いところ。
その面白さは格別。
上手く行けば、「語り劇」の真骨頂が楽しめる演目、それが芥川龍之介の「杜子春」です。
2023年3月18日(土)桜咲く北鎌倉の、名刹「浄智寺」さまでの文学ライブ。全国からZoomでも見られます。お待ちしております!
ご予約はコチラのページの予約カレンダーから
↓↓↓